考えるつゆくさ

乳がん治療の記録、子どもの教育や心理などについての考えをつづります

乳がん治療の記録【32】人は優しい

友人や知人の励ましやお祈りは心をあたたかくしてくれました。神社にお参りしてくれたり、招き猫を奉納してくださったり、体にいい食べ物やDVDなんかを送ってくれたり、ありがたいです。「大丈夫」「あなたは強い人」「待ってるよ」という希望の言葉も、力が湧き出る魔法です。

「入退院に付き添いしようか」なんて、遠方に住んでいるのに言ってくれる方もいたりして、「なんて優しいんだぁ~」と声に出して泣きました(でもタクシーで行き帰りできるので「ありがとう、大丈夫」と言いました)。私もだれかのそういう時にはさっと手を差し伸べられる人になりたいと思いました。入院や手術の不安や心細さをやっと実感できたので。

悩んだり疑問があった時にはネットで質問をしました。皆さんとても親切丁寧に答えて下さりました。同じ非浸潤がんの方、明日手術の方、治療を終えてアドバイザーとして活動なさっている方などに共感していただいたり、共にがんばりましょうと励まし合えたりできました。

ネットとは言え、向こうにいるのは人。罵詈雑言を吐く人もいるのでしょうが、とても誠実で優しい人もいるのがよくわかりました。ネットでなくったって言葉で相手を傷つけようとする人はいます。

私はやはり家族以外では、出会う人に恵まれているなと感じました。

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乳がん治療の記録 入院前編終わり

 

乳がん治療の記録【31】たくさんの書類とサイン

治療、入院や手術には、たくさんの書類にサインをするものなんだと知りました。

検査結果ごとに「説明を受けました」のサイン、治療の計画書に「承知しました」のサイン、入院証書に「入院します」のサイン、手術同意書に「同意しました」のサイン。

他にも、麻酔をすることへの同意、輸血するかもの同意、手術中や手術後に動けないからエコノミー症候群になるかもしれないけど専用のストッキングを履くなどの対策をしてもらいますよの同意のサインなど。

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こういうのを履く

また、仕事や家族構成、病歴、緊急連絡先などの患者の情報を記す書類もいろいろ書きます。

 

これだけの書類に目を通してサインをするとなると、高齢になったり認知症になったりしたら、なかなか難しそうだなと感じました。まあ、その時はその時で、誰かしらが代理をして下さるのだろうとひとまず楽観的に考えました。

乳がん治療の記録【30】レトルト食品を買っておく

退院の時には身のまわりのことは自分でだいたいできる状態だそうです。

だいたいとは・・・?

重い荷物を持ったり、重いフライパンを振ったりするのはよくないとは聞きました。買物や調理がどの程度できるのかよくわからないので、念のため、レトルトやインスタントの食品をいろいろとネットで注文しました。

カルディでカレーやパスタのソース、野菜ジュースやお湯を注ぐだけのスープなどを買いました。無印良品には「ごはんにかけるシリーズ」というのがあって、文字通りごはんにかけるだけでよいサムゲタンやガパオや牛すじのぼっかけなども買いました。食べ物以外にも洗剤やボディーソープなど重いものも多めに買いおきしました。

退院後にもし体が痛かったりしんどかったりしても、一ヶ月くらいはなんとか生きていく目途はつきました。

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かけるだけ


 

乳がん治療の記録【29】入院準備/持ち物リスト

入院の経験者は友人知人にも多く、「消灯が10時だから体を慣らしておいたほうがいいよ」とか「キンドルがあると便利だよ」とか「ぬり絵は意外と騒音」「私はイラストロジックをしてた」などいろいろ教えてもらいました。

持ちものリストをメモしておきたいと思います。ちなみにパジャマやタオルは一日数百円でレンタルできる病院が多いようです。

 

スマホ ・キンドル ・ラジオ ・イヤホン ・充電のためのケーブル

・メモ帳 ・ペン

・下着 ・寒い時に羽織るもの ・くつ下 ・病院内を歩く時のくつ

・ボディソープ ・シャンプー ・リンス ・洗顔フォーム ・体を洗うタオル

・これらの洗面用具を持ち運ぶ入れ物(私は浴用桶にしました)

・歯ブラシ ・歯磨き粉 ・うがい用コップ ・鏡 ・ブラシ ・保湿剤など

・マスク ・カイロ ・ティッシュ ・ウェットティッシュ ・ナプキン ・ポリ袋(ごみ袋や小物入れなどに便利)

・ストロー付きコップ ・お菓子

 

しかしこれらは(冒頭の3つ以外は)病院内のショップで買えます。ショップには電源のUSBタップなんかも売っていたりします。

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ストロー付きコップは100均の介護コーナーとかにあります

 

乳がん治療の記録【28】センチネルリンパ節生検とは

入院の10日前に“オペオリ”(オペのオリエンテーション)なるものをします。“非浸潤がんにより左胸を全摘する手術をする”ということを先生と再確認し、手術の方法についても図にしながら教えてもらいます。

「こんなふうに乳頭をくり抜いて、そこから乳房の中の乳腺を全て取り除きます」

こわいこわいこわい・・・。

「リンパ節も数個切除しますので、腋の下のほうも切ります。手術前にセンチネルリンパ節の位置を調べるため、少し痛い注射を打ちます」

いやだいやだいやだ・・・。

早期の乳がんでも必須でリンパ節を数個切除します。“センチネルリンパ節生検”というものを行うためです。乳がんの場合、最初に転移するのが付近にあるセンチネルリンパ節というリンパ節と考えられています。それに転移があるかどうかを手術中に切り取って調べる検査です。

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センチネルリンパ節を探せ

転移がなければそのまま傷口を閉じ、転移があったら周辺のリンパ節や脂肪なども切除するのだそうです。

つまり、メスで切る傷口は、乳房の部分と脇の下の部分の二ヶ所になります。そんな大きな傷がふたつもあって私の体は耐えられるのだろうか・・・。

 

あわてものの私はよく切り傷や引っかき傷を体に作ります。そのたびに落ち込むのですが、絆創膏さえ貼っておけばいつのまにやら治ることはありがたいとつねづね感じます。私が修復計画を何ひとつ立てずとも、体はいつも傷を勝手に修復してくれます。もしパソコンが壊れたら、私は時間と体力を使ってがんばらないと治せないのに、傷は私ががんばらなくても体が治してくれます。

いつでも傷をきれいに治してくれる私の体を信じようと思いました。

乳がん治療の記録【27】周術期は赤点

お医者さんをしている友人に、手術の前後を“周術期”と呼ぶことと、周術期は特別に心穏やかにして、食事も睡眠もしっかりとって体調をととのえることが大事と教えてもらいました。

にもかかわらず、私はうつっぽくなっていました。「どの死に方が一番いいかな・・・。やっぱり樹海かな・・・」のように考え始めたらよからぬしるしだと、過去のうつ病の経験からわかります。

そして食べられなくなり眠れなくなりました。りんごしか食べられない日もありました。寝つきも悪く、やっと眠れても、病院内を悲しい気持ちでうろうろしている夢なんかを見ます。

眠れない時はラジオをつけました。オードリーや星野源、南キャンの山ちゃんの笑い声なんかを聴いていると不安が少し消えます。入院中もラジオが聴けたらいいなと思い、イヤホンで聴ける小さいラジオを買うことにしました。

大きな病院では、がん患者の心のケアするための診療科(「精神腫瘍科」もしくは「腫瘍精神科」)や相談センターなどがあります。私の通っていた病院にもありました(気づきませんでした・・・)。あまりにも落ち込みがひどい時には、行ってみるのもよいかもしれません。

 

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卵を割っただけで悲しくなった



乳がん治療の記録【26】乳がん治療の先進医療とは

全摘手術をしないですむ方法は本当にないのかと模索する中で、先進医療についても調べました。

先進医療とは、最先端の医療のうち、国によって認められたものです。しかし標準治療とは違って効果は確実とは言いきれず、また保険がきかないため高額です。がん保険でお金をいくらかいただける場合もあります。

残念ながら私の非浸潤がんに合う先進医療は見つかりませんでした。しかし、しこりのあるタイプの乳がんならいくつかあるらしく、メモしておきたいと思います。

まずは乳房に針をさし、ラジオ波という電磁波を当ててがんを焼き切るラジオ波熱焼灼(しょうしゃく)療法です。

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がん細胞を狙い撃ち

放射線の一種を使う陽子線治療は非浸潤がんにもききますが、狭い範囲のみです。ちなみに治療費は300万円くらいだそうです。高い!

同じく放射線の一種を使う重粒子線治療はしこりのあるタイプのみで、治療費はさらに高いそうです。

先進医療ではないですが、他にも乳房にマイナス160℃の針をさし、しこりを凍結させて破壊する凍結療法もあるそうです。

 

非浸潤がんでも浸潤がんでも、乳房を切らずに治せる時代が早く来たらいいなと思います。

乳がん治療の記録【25】早期がんのパラドックス

入院・手術が近づいてきても、私の中ではまだ「なぜ毎年検診を受けて早期の非浸潤がんで見つかったのに全摘なんだろう」という思いは消えませんでした。

改めて、乳がんについてまとめますと、がんというのは増えることが止まらない細胞です。そしていろんな臓器をだめにしていきます。

そして、乳がんのほとんどは乳管から発生しますが、乳管の中だけで増え続けるぶんにはさほど問題はありません。これが非浸潤がんの状態です。寿命をまっとうされた女性の乳房を調べると、非浸潤がんがあることは少なくないそうです。

だから放っておいてもいいのではないかとも思ってしまいます。しかし、乳管の壁を破ったら、がん細胞が血管やリンパに入り込み、流れ流れて他の臓器や骨などに転移することも可能になります。

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左が乳管の中にがん細胞がとどまっている状態で、右が乳管の壁を破った状態

非浸潤がんが乳管の壁をいつ破るかは誰にも予測できません。20年後かもしれないですが、明日かもしれないのです。だから早めに手術するのがよいのです。

そして、がんが乳管の中だけで増え続けるため、細い通路を進んでいき、結果的にしこりを作るタイプよりもがんのいる範囲が広くなってしまう非浸潤がんは、全摘をしなければならない場合が多くなります。

早期なのに全摘。

ある非浸潤がんの患者さんがブログで“非浸潤がんパラドックス(矛盾)”と表現されていましたが、まさにその通りと思います。

 

乳がん治療の記録【24】全身麻酔について

入院まであと2週間です。麻酔科の先生、薬剤師さん、看護師さんから入院や手術の詳細を聞くために病院へ行きました。

麻酔科の先生にたずねました。

全身麻酔は初めてなので、とても怖く感じています。素朴な疑問ですが、手術の途中で目が覚めたりは・・・」

「患者さんにとっては初めてでも、この病院では一日5、6件の手術が問題なく行われていますよ」

そりゃそうだ。

全身麻酔をすると呼吸が止まり、人工呼吸器をつけるのだそうです。

「呼吸が止まるんだ・・・。今まで止まったことないのに・・・。死ぬみたいで怖い・・・」と身震いしました。のどには人工呼吸器とつなぐためのチューブが入れられるそうです。想像しただけでおえっとなります。

 

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麻酔マスクは医療ドラマなどでよく見ますね

麻酔科の先生は手術中ずっと「ちゃんと眠っているか」「呼吸はしているか」「痛みは感じていないか」をモニタリングしてくださっているのだそうです。少し安心しました。

そういえば中高時代の後輩に麻酔科の先生になった人がいます。こういうお仕事をしているんだな、と初めてわかりました。彼女に以前「モンスターみたいなうるさい患者さんとかいたりして大変じゃない?」と聞いたら、「眠らせちゃうんで平気です」と笑みをうかべていてかっこよかったです。

薬剤師さんからは薬のアレルギーがあるかどうかを聞かれます。手術後に痛み止めなどの薬を服用するためです。また、看護師さんからは手術当日のスケジュールなどを教わります。手術中は全裸なのだそうです。「え!恥ずかしい!」と思うのは私だけで、先生たちも看護師さんたちも何とも思わないでしょう・・・。

「あの・・・当日もし生理になったらどうなりますか・・・?」

「大丈夫ですよ。手術中は手術台にシートを敷きますし、手術後は紙パンツです」

「紙パンツ・・・」

今年は初体験が多そうです。

乳がん治療の記録【23】おっぱい、ごめん

乳房の全摘手術をすることと、再建手術はしないことを決めてから、お風呂の鏡で改めて自分の体を見てみました。

「なかなかいいおっぱいだったんじゃないか?」と馬鹿みたいですが思いました。

私は長らく自分をゲテモノだと思って過ごしてきました。子どものころから母に「おかしな顔だ!目ばかりがぎょろぎょろしてお化けみたい!」「体が痩せてて餓鬼みたい!手足が細長くて骸骨みたいで気持ち悪い!」などと容姿を罵倒されたり嘲笑されたりしてきたからです。

思春期のころには道を歩いたり電車に乗ったりすることがストレスになってしまいました。「ゲテモノがここにおりまして、本当にすみません」とまわりの人に対して思っていました。

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道がストレス

今、子どものころの写真を見ると「普通にかわいらしいのにな」と思います。友人には容姿を罵倒したり嘲笑したりする人はいませんでした。みんな優しかったので、むしろ「目が大きくていいな」とか「痩せててうらやましい」とか言ってくれました。容姿の美醜は主観的なものですが、母にもそういうとらえ方ができたってよかったはずです。

自分はゲテモノではないし、そもそもゲテモノ呼ばわりされていい人などこの世にいないと思えるようになったのはごく最近です。

若いころに「自分はゲテモノだから」と思って、着たい服をあきらめていたことを今とても惜しく思います。

「私のおっぱい、ごめんよ・・・。胸の開いた服とかビキニとか着せてあげられればよかったね」と謝りました。

「下着もいつも無印とかユニクロのブラトップばかりでごめんね・・・。もっとカラフルなのとかセクシーなのとか着てみたかったかい・・・?」

 

それにしてもなぜ母は子どもの容姿にすら罵倒や嘲笑を何百回となくしたのか。子供の自信を失わせる目的は何だったのか。

「お母さんの罵倒を真に受けるほうが悪い。お母さんの嘲笑に自信を失うほうが悪い」と考える父も同罪です。