考えるつゆくさ

毒親の問題などについての考えをつづります。また、乳がん治療の記録も綴っています。

乳がん治療の記録【8】乳がんの先輩たちに連絡

乳がんと言われた日は、帰宅後もずっとしょんぼりしていました。「今日くらいは落ち込んでもいいよね」と思いました。

 

「もし乳がんだったら真っ先に連絡しよう」と思っていた人が二人いました。乳がんを経験した学生時代の同級生のUさんと年上の作家のYさんです。

 

Uさんはまだ30代だった時になりました。手術と抗がん剤の治療を経て、今はホルモン剤の治療は続けていますが、元気に子育てをしています。Uさんに連絡をすると、びっくりしながらも、「先生を信頼してお任せすれば大丈夫!」「気持ちを楽にね!」と励ましてくれました。また、今後の治療についてや、高額医療費制度とがん保険のことなども教えてくれました。

 

Yさんにも連絡しました。Yさんは全摘をし、抗がん剤ホルモン剤の治療も乗り越え、その後20年間意欲的に創作活動をされています。「何でも聞いて!不安も悩みも聞くよ!」「胸がなくなっても、あなたは変わらないから大丈夫!」と心に寄り添ってくれました。全摘後には前開きブラジャーが便利なことや胸パッドのことなども教えてくれました。

 

乳がんの先輩たちがいて心強く、そしてその優しさがありがたくて泣けました。 

 

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術後は取り外ししやすい前開きがよいそうです

 

一方、同じく乳がんの経験者でもあるはずの母が私にかけた言葉は、「うちの家族はみんな病気になる」「魑魅魍魎のせい」「あんたもまた次の病気になる」です。昔からこんなことしか言えない彼女こそが魑魅魍魎なのではないかと常々思っています。 

 “言霊(ことだま)”という言葉もあるように、あたたかい言葉や希望のある言葉を口にしているほうが、明るく幸せな人生を過ごせるのではないかと私は思っています。

 

乳がん治療の記録【7】乳がんと言われた日

病院から出ると悲しくなってきて泣きました。歩きながら「何がいけなかったんだろう、あれがいけなかったんだろうか、これのせいだろうか」と原因を考え始めました。 

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街路樹が黄葉していたのをぼんやりとおぼえています

「自分の体にストレスをかけてしまっていたんだろうか」「きっとそうだろう、私はすぐ自分を追いつめる」「自分が悪いと思って、反省ばかりしているから」「呼吸していることにすら罪悪感を抱いてしまうのはなぜ」「自分に優しくしていない、全然していない」と駅のホームでもうなだれていました。

 

しかしながら「いずれ乳がんになるかも」とうっすらと思ってはいました。なぜなら母も叔母も祖母も乳がんになっているからです。乳がんが遺伝することはよく聞きます。だからこそこまめに検診に行っていたのですが、いざなってみるとちゃんとショックでした。「検診に行ったばかりに見つかってしまった・・・。友だちに検診をすすめるのはやめよう・・・」というおかしな考えもよぎったくらいです。

 

母に乳がんであったことを告げると予想通り心配してくれるわけもなく、「あたしだって乳がんになった!」「あたしなんて二回もなった!」と言いました。彼女はなぜいつも他人と張り合おうとするのか。私にはわかりません。娘はまだ一回だが自分は二回だとなぜ勝ち誇っているのか。理解に苦しみます。

 

娘の体を心配してくれる普通の母親が欲しかったと、大人になった今でも思います。そして歳を重ねるごとに哀しくなります。

 

乳がん治療の記録【6】浸潤がんと非浸潤がんについて

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乳房内には乳管がはりめぐらされている

 

ほとんどの乳がんのがん細胞は乳管の中から生まれます。乳管とは、母乳を作る乳葉と母乳が出る乳頭の間にある通路です。乳房内に放射線状にはりめぐらされています。

 

いわゆる“しこり”になる浸潤がんとは、がん細胞が乳管の壁を突き破り、管外で増えたもの。一方、非浸潤がんとは、乳管の壁を破らずに、管内でのみ増えていきます。しこりのまだできていない早期がんではありますが、細い乳管をうねうねと進んでいくので、がんのある範囲は広くなってしまいます。

 

しこりが小さい場合の浸潤がんですと、がんのある範囲としては広くはないので、その付近を取り除くだけの乳房温存手術も可能です。しかし非浸潤がんは範囲が広くなるため、乳房切除手術いわゆる“全摘”になることが多く、私の場合もそうであるとのことでした。

 

「全摘……」


いまいちピンときません。自分の左の乳房がなくなるのが想像できません。44年間連れ添ったものがなくなるなんて……。  

 

次回の来院からは実際に手術を担当される先生の診察に替わるとのことでした。ため息をつきながら病院を出ました。

 

 

乳がん治療の記録【5】マンモトーム生検の結果を聞く

生検の結果が出るまでの2週間は落ち着かない日々でした。とは言えただ待つのみで、どうがんばりようもないのでなるべく普通に過ごすようにしました。人にも会い、テレビも見て、仕事もしていました。

 生検の結果を聞きに病院へ。先生はおっしゃいました。

 「いい結果ではありませんでした。非浸潤がんでした。」

それを聞いてまず「は~、めんどくさいな~」と思いました。入院して、手術して、痛い思いや苦しい思いをするのは、どう考えてもめんどうくさいです。私は人一倍めんどうくさがりやなので、それらに耐えられるかどうか自信がありません。

先生は乳がんについての冊子を開き、乳房のイラストを指し示しながら、非浸潤がんの説明をして下さりました。

 

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病院オリジナルの冊子でした

 

乳がん治療の記録【4】マンモトーム生検後

恐怖のマンモトーム生検は無事に終わりました。でも、さらなる衝撃はお会計で24100円と伝えられた時でした。高っ!2万あれば余裕で足りると思っていたのに……。手持ちがないのでクレジットカードで払いました。このタイプの生検は手術扱いになるので高額なようです(手術扱いということは、医療保険の対象になる場合もあります)。

 

外から見える傷口は針をさした小さな穴だけです。傷口に貼ったテープに少し血がにじんでいます。帰宅後、麻酔が切れ始めると少し痛くなりました。教えられたようにアイスノンで患部を冷やし、処方された痛み止めを飲みました。

 

 

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傷口は針の穴のみ


翌朝にはもう痛くはありませんでした(しかし2ヶ月くらい、時々ちくっとしました。外から見える傷口は小さくとも、乳房内の組織をちぎり取ったわけですから、それなりの怪我のような状態です)。

ひと昔前の生検はメスで切って開いて取り出すような外科的方法だったようですが、小さな穴だけで済むようになって良かったです。


生検で吸い取った組織の中にがんがあるかどうかは次の来院でわかります。不安で落ち着かない2週間でした。

 

乳がん治療の記録【3】マンモトーム生検を受ける

生検の日の待合室では逃げ出したい気分でした。乳房に太めの針をさして中身を吸い取るなんて、どう考えても怖いし痛そうです。

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右のように細長く組織が吸い取れるそうです


私は何かあるとすぐに不安に押しつぶされそうになります。母親に「どうせできっこない!」「うまくいくわけがない!」とネガティブなことしか言われないで育てられたせいかと思っています。待合室で過呼吸になって倒れそうです。

深呼吸をしながら、ポジティブのかたまり、アンミカさんが耳元で声をかけてくれる妄想をしました。「ええやん、ええやん、これも経験やん。検査してもらって本当のことがわかったら一番ええやん」。

少し力が湧いてきました。ポジティブな声かけは人の心を強くする魔法です。そういう考えが自然とできるような育てられ方を初めからさせてもらえたらよかったです。

 

名前を呼ばれました。アンミカさんに背中を押されながら私は検査室へ向かいます。

今回の生検は“マンモトーム生検”という名称で、マンモグラフィーの検査の時のように乳房を板ではさんで、レントゲンを使いながら行われます。

前開きの検査着に着替え、横向きに寝ます。そしてレントゲンを見ながら、がんのいそうな石灰化のある付近を狙って針をさし、組織を吸い取ります。

麻酔の注射は痛くはありませんでした(痛いと感じる人もおられるようです)。吸い取る時も、麻酔が効いているので何も感じませんでした。技師さんや看護師さんたちはてきぱきと作業されます。こまめに「気分悪くないですか?」「順調に行ってますよ」と話してくださるのがありがたいです。あるとなしでは安心感が全然違います。

 

20分くらいで終わりましたが、「寒いですか?」と聞かれるくらい足が震えていました。アンミカさんのポジティブさをもってしても、やはり怖かったようです。

 

乳がん治療の記録【2】大きな病院で再検査

大きな病院の乳腺外来は先生も技師さんも看護師さんも女性ばかりで安心感がありました。女性の病気を女性に診てもらえる時代になってありがたいなぁと感じました。

 

その日はマンモグラフィと超音波の検査を改めて行いました。超音波の検査は、技師さんがバーコードの読み取り機のようなものを乳房に当てて、乳房の中身をのぞきます。しこりを見つけるのに適した検査です。

モニターに映像が映し出されますが、まるいものを見つけるたびに技師さんはそれをじぃっと見ます。大きさを測ったり、血流があるかどうかを調べます。がんというのは増殖する気がまんまんな細胞なので、まわりの血流もどんどん引き寄せるものなのだそうです。まるいものに血流が少なければ良性のしこりで、多ければがんのしこりである場合が多いようです。

 

私の左胸には、がんらしきしこりは確認されませんでした。

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モニターに映し出されるまるいものをじっくり調べます

となると、次に検査するべくは、しこりの前段階のがんがあるかどうか。というわけで一ヶ月後に生検を受けることになりました。そんな先でいいものなのかと心配になったので先生に聞くと、「もしがんであったとしても、経験上、これは急に進むタイプではない」とのことでした。あわてなくてもいいのなら少し安心しました。

 

それにしても乳房に太めの針をさして組織を吸い取る検査だなんて……想像するだけで痛そうです。液体でもないものをなぜ吸い取れるのか……。とても憂鬱です。

 

乳がん治療の記録【1】クリニックの乳がん検診にて

「大きな病院で検査をしてもらってきてください」とクリニックの先生がレントゲンを見て言いました。

「検査とは……?」「乳房に太めの針をさして組織を吸い取ります」「痛そうですね……」「麻酔するから大丈夫だよ」「そうでしょうけど……」  

その吸い取った組織にがんがあるかどうかを顕微鏡などで調べる検査を、“生体検査”略して“生検”と呼ぶそうです。 

 

このクリニックでは30代の時から10年以上、毎年乳がん検診をしていただいていました。乳房のレントゲンはマンモグラフィと呼ばれる機械で撮影されます。乳房を板で挟んでぺっちゃんこにして撮影するので痛みをともなうのが少々難です。今回の検診ではそのレントゲンに“石灰化”なるものが写っていたそうです。石灰化はレントゲンの黒い背景に白い星のように映ります。 

分泌物の中のカルシウムが引っかかっているだけで問題のないものが多いのですが、がんの死骸である場合もあるそうです。 その場合は小さな星が密集したように見え、私の左胸のレントゲンにもそれがありました。

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石灰化が密集している場合は、がんの可能性も

レントゲンには、いわゆる“しこり”も写ります。石灰化はしこりになる前段階なのだそうです。たとえしこりではなかったとしても、もしすでにがんが発生し、うごめき始めたのであるなら早めに対処せねばなりません。 

 

「がんだったらいやだなぁ。手術とかめんどくさいなぁ」 と思いながらも私は数日後、紹介状をたずさえ大きな病院へ行きました。